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若年性骨髄単球性白血病の新たな発症メカニズムとその治療法を発見! research
若年性骨髄単球性白血病の新たな発症メカニズムとその治療法を発見!
―今後の新規治療法開発への期待―
名古屋大学大学院医学系研究科(研究科長・門松 健治)小児科学の高橋 義行(たかはしよしゆき)教授、村松 秀城(むらまつ ひでき)助教、村上 典寛(むらかみ のりひろ)大学院生、小島 勢二(こじま せいじ)名誉教授、東京大学先端科学技術研究センターゲノムサイエンス分野の油谷 浩幸(あぶらたに ひろゆき)教授、京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学の小川 誠司(おがわ せいし)教授、国立がん研究センターの間野 博行(まの ひろゆき)研究所長らの研究グループは、若年性骨髄単球性白血病(Juvenile myelomonocyticleukemia; JMML)の小児患者で包括的遺伝子解析を行い、その成果を報告しました。
JMML は乳幼児期におこる難治性の(予後不良な)小児がんの一種です。これまでの研究により、PTPN11 など RAS 経路に関連した 5 つの原因遺伝子が見つかっていましたが、一部の症例の原因遺伝子はわかっていませんでした。本研究グループは 150 人の JMML 患者について、次世代シーケンサーという強力な解析法を駆使した様々な遺伝学的解析を行いました。
その結果、RAS 経路遺伝子に異常を認めない 3 人の患者さんから ALK/ROS1 チロシンキナーゼ関連融合遺伝子を発見しました(RANBP2-ALK、DCTN1-ALK、TBL1XR1-ROS1)。うち過去の 2 人の患者(DCTN1-ALK、TBL1XR1-ROS1 陽性)は標準的な治療(化学療法や骨髄移植)に反応せず、発症後、早期に死亡しており、チロシンキナーゼ関連融合遺伝子を有する JMML患者の予後は非常に不良であると考えられました。
また、研究期間中に発症した 1 人の患者では、診断後、早期にチロシンキナーゼ関連融合遺伝子(RANBP2-ALK)が確認されたため、ALKチロシンキナーゼ阻害薬(クリゾチニブ)を用いた標的治療を行いました。すると、投与開始後およそ 1 か月で腫瘍細胞がほぼ完全に消失し、病気を完治することができました。
また、JMML 患者の中に、遺伝子の制御に関わる DNA のメチル化に異常をきたした「高メチル化群」が存在することをつきとめ、他の患者と比較して、非常に予後が不良であることを発見しました。
これらの結果をもとに、チロシンキナーゼ関連融合遺伝子に対する阻害薬を用いた分子標的治療や、DNA メチル化に基づいて疾患の悪性度を評価し適切な治療を行うことで(層別化治療)、今後の治療成績の向上が期待されます。
本研究成果は、米国血液学会(American Society of Hematology)発行の科学誌『Blood』に掲載されました(米国東部標準時間 2018年2月2日付の電子版)。
※ 詳細は、名古屋大学のプレスリリースを御覧ください。
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