OFF-LABEL保険適応外薬剤の入手・投与

保険適応外薬剤の入手・投与 FOR USING INSURANCE OFF-LABEL DRUGS

未承認薬の使用を認める
「患者申出療養」

日本の保険制度では未承認薬の使用に高いハードルがありますが、2016年、国内未承認の医薬品を保険外併用療養として使用したいという患者・患者家族の願いに応えるため「患者申出療養」が創設されました。
これは、患者から未承認薬を使用したいとの申し出があった場合、評価会議で審議して、その可否を決定する制度です。多くの未承認薬は極めて高額であるという問題はさておき、これまで入手できなかった未承認薬を、必要とする患者に投与できる道筋ができたことは喜ばしいことです。
名大病院からは、「チオテパ」という抗がん剤の使用に関して、患者申出療養の申請をおこない受理されましたが、2018年4月現在この制度の適応を受けたのは名大病院の1件を含め全国で4件のみです。

"チオテパ"について

「チオテパ」とは?

  チオテパとは、移植の前治療薬として、米国やヨーロッパ全域で承認されている薬です。日本でも、2011年までは造血幹細胞移植の治療薬として2000人以上に使用されており、脳腫瘍に対する移植の前治療薬としては欠かせない薬剤でした。しかし、販売会社の都合により、日本では2011年以降発売中止になっています。製薬会社へその必要性を訴えるとともに、4つの学会から医療上の必要性の高い未承認薬として検討会議に販売の再開を要望していますが、販売中止から6年たった現在でも、販売再開のめどはたっていません。

  名大病院における小児脳腫瘍に対する造血幹細胞移植の治療成績を、2010年以前に、チオテパを含む前治療で移植した7例と、チオテパが入手できずに、ほかの抗がん剤を前治療に用いて移植した5例とを比較しました。

小児脳腫瘍に対する造血幹細胞移植の治療成績

症例数 5年生存数
チオテパ使用(2010年以前) 7例 5例
チオテパ未使用(2011年以降) 5例 0例
  チオテパを含む前治療で移植した患者は7人中5人が生存していましたが、チオテパを含まない前治療で移植した最近の5人は、全員が腫瘍のコントロールがつかずに死亡しています。医療は、つねに進歩するものと信じてきた者にとって、この事実は耐え難いものです。名大病院だけでなく、同様なことが日本全国至るところで起こっていると考えられます。

患者申出療養の課題

  患者申出療養は臨床研究としての実施が前提となるため、申請時には「実施届出書」「臨床研究計画書」「患者説明同意書」「医療技術の概要書」「保険収載」といった書類を用意する必要があります。こうした専門書類の作成には、先進医療や医師主導試験を計画するに匹敵する作業が必要であり、臨床医が片手間に実施できるものではありません。名大病院には、臨床研究を支援する特別なスタッフがそろっていますが、彼らの助けをかりても、厚生労働省との事前の打ち合わせを含め、実施計画の作成に半年はかかります。
  また、未承認薬の多くはたいへん高価で、チオテパを使用した患者もひとりあたり50万円〜100万円の費用がかかりました。さらに、臨床研究の実施にかかる費用も患者負担になります。

保険適応外薬剤の
入手・投与を支援します

  患者申出療養によって保険適応外の未承認薬が使いやすくなることが期待されていましたが、ハードルの高さは緩和されていないように感じます。
  名古屋小児がん基金では、保険適応ではない薬剤を必要とする患者に対し、薬の入手・投与ができるよう支援を続けていきます。

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