GENOME MEDICALゲノム医療
ゲノム医療 GENOME MEDICAL
個人の遺伝情報から、最適な治療法を提案する。
これまで、抗がん剤による治療はがんの種類によって決められていました。
例えば白血病に対しても、最大公約数の白血病の患者さんに効果が期待できる抗がん剤を組みあわせたプロトコール(実施計画書)をつくり、すべての患者さんが同じ内容の治療法を受けてきました。
白血病などのがんは、正常な細胞の遺伝子が何らかの原因で傷つくことで発症します。近年開発が著しい分子標的薬は、がんの種類を問わず、遺伝子変異の種類でその効果が規定されます。変異にマッチしていれば高い効果が期待できますが、外れていれば効きません。
このような医療が出現したのも、次世代シークエンサーという高性能の遺伝子解析装置が開発されたからです。
ゲノム・DNA・遺伝子の違い
ゲノムとは「DNAのすべての遺伝情報」
「DNA」とは?
「DNA」とは、遺伝情報を記録している物質です。DNAの中にある、身体的特徴や特定の病気へのかかりやすさといった遺伝情報を持つ特定の部分を「遺伝子」と呼びます。DNAのうち、遺伝子にあたる部分は1.5%程度です。
「染色体」とは?
「染色体」とは、DNAが特定のタンパク質と結合してできた物質です。DNAは染色体の中に細かく折り畳まれていますが、そうすることでDNAが破壊されにくくなり、また、細胞分裂の際に異常が起こりにくいというメリットがあります。
「ゲノム」とは?
「ゲノム」とは、DNA(遺伝子+染色体)の「すべての遺伝情報」を意味します。かつてはゲノムを調べるためには膨大な時間とお金が必要でしたが、近年は、テクノロジーの進化によって、安価かつ短い期間での診断が可能となっています。
名大病院小児科の取り組み
「次世代シーケンサー」と呼ばれる最新機器。これまでの機器では一部のゲノム解析しか叶わなかったが、本機器では、すべてのゲノム解析を一週間程度で行うことができる。
名大病院小児科では臨床研究の一環として、難治性小児がん患者さんを対象に、次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析を5年前から実施しています。解析方法は、100〜500個のがんの原因となる遺伝子のパネルをつくって解析する「ターゲット解析」と、2万個を超えるすべての遺伝子を網羅的に解析する「全エクソーム解析(RNA解析)」の2種類を用いています。
多分野にわたる専門知識と高度な技術が必要であるため、自分の施設で実施している施設は少数です。
名古屋小児がんゲノムプロジェクト
成人のがんと比べて、小児がんは患者さんの数が少ないにもかかわらず種類は多いために、専門の病理医でも診断に迷うことは少なくありません。しかし、それぞれの小児がんには特有の遺伝子変異があるので、遺伝子を調べれば正確な診断をおこなうことが可能です。実際に名大病院小児科では、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子解析で診断がつき、治療を開始できた事例があります。
小児がんの患者さんたちに網羅的な遺伝子解析をおこなうことで目の前の子どもを助けるとともに、小児がんの原因解明や新たな治療法の開発を進める必要があると考えています。
これを「小児がんゲノムプロジェクト」と掲げ、名古屋小児がん基金では、その解析費用のサポートをおこなっています。
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「CAR-T療法」について