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小児の難治性白血病を引き起こす MEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見 research
小児の難治性白血病を引き起こすMEF2D-BCL9 融合遺伝子を発見
名古屋大学大学院医学系研究科(研究科長・髙橋雅英)小児科学の小島勢二(こじませいじ)名誉教授、村松秀城(むらまつひでき)助教、鈴木喬悟(すずききょうご)大学院生、名古屋大学医学部附属病院先端医療・臨床研究支援センターの奥野友介(おくのゆうすけ)特任講師らの研究グループは、小児がんのなかでも最も頻度が高い急性リンパ性白血病(Acute lymphoblastic leukemia; ALL)の新たな原因として MEF2D-BCL9融合遺伝子を発見し、その機能を解析しました。
ALL は、小児期において最も頻度が高い血液がんです。治療成績は向上しつつありますが、再発した患者では依然として予後不良です。小児の再発・治療抵抗性 ALL を引き起こす遺伝子の異常を発見するため、本研究グループは、59 人の患者で次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析を行いました。その結果、4 人にこれまで報告のない MEF2D-BCL9融合遺伝子を検出しました。
この融合遺伝子をもつ白血病は、特徴として、思春期(10 歳以降)の発症、B 前駆細胞性に分類される免疫表現型、細胞内に多くの空胞を持つ特異な形態、従来の抗がん剤治療に対して極めて抵抗性を持つ、などがあります。
MEF2D-BCL9 融合遺伝子を ALL のモデル細胞に遺伝子導入すると、細胞の増殖が促進され、治療の鍵を握る副腎皮質ステロイド薬が効きにくくなりました。しかしその一方、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬や、プロテアソーム阻害薬といった、他のがんで実用化されている分子標的薬の効果が期待できることが示されました。
本研究結果から、MEF2D-BCL9 融合遺伝子は、予後を予測する分子マーカーとして有用である事が分かり、分子標的薬を組み入れた新しい治療方針の策定や、この融合遺伝子を標的とした新薬開発などの応用研究による ALL の治療成績の向上が期待できます。
本研究成果は、米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical Oncology)より発行されている科学誌『Journal of Clinical Oncology』(米国東部標準時間 2016年8月8日付の電子版)に掲載されました。本研究の一部は、日本対がん協会リレー・フォー・ライフ・ジャパン「プロジェクト未来」助成によってサポートされました。
※ 詳細は名古屋大学のプレスリリース(PDF)をご覧ください。
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