LECTUREDr.小島の小児がん講座
小児がんの診断法と検査 lecture
小児がんの診断法と検査:小児がん基礎知識(2)
小島勢二
小児がんの診断
小児がんの診断に用いる検査は基本的には成人と変わりません。固形がんに対しては、CTやMRIなどの画像診断を行い、腫瘍の発生部位や広がり、さらに転移部位を同定して、病期を決定します。
肝芽腫におけるAFPや神経芽腫における尿中VMA,HVAなどの腫瘍マーカーは診断のほか、治療への反応を判定するうえでも大変有用です。画像検査で腫瘍の発生部位を同定した後、腫瘍の摘出や生検を行い腫瘍組織の病理診断を行い確定診断を下します。それぞれの腫瘍に特異的な染色体異常や遺伝子変異があるので、病理診断でも確定診断が困難な場合には、これらの検査が大変有用です。
白血病や悪性リンパ腫の診断には、末梢血や骨髄塗抹標本を顕微鏡で観察して診断します。リンパ系腫瘍においては、免疫マーカー検査でTリンパ球由来かBリンパ球由来かを分類します。白血病やリンパ腫では各病型に特徴的な染色体異常や遺伝子変異があるので、染色体分析や遺伝子検査が行われます。
CT検査
CT検査です。患者さんは肩の脹れを主訴に来院しました。肩甲骨は腫瘍で破壊されていたので転移性腫瘍を疑い腹部のCTを撮ったところ、副腎部位に充実性の腫瘍が発見されました。病理診断の結果、神経芽腫と診断されました。
MRI検査
頭部のMRI像です。MRIは磁気の力を利用して画像を得るので、C Tとは異なり、放射線の被曝がありません。
RI検査
RI検査は放射性同位元素を体内に投与し、一定時間経過した後にガンマカメラを用いて体内から出てくる放射線を検出します。123I-MIBGは副腎髄質や交感神経節から発生した腫瘍に集まるので、神経芽腫の診断に用いられます。
PET検査
がん細胞は通常の細胞に比べて、多量のぶどう糖を取り込む性質があります。PET検査はこの性質を利用して、がん細胞に集まったブドウ糖に類似した放射性薬剤から放出される放射線を特殊なカメラで検出します。PET/CTといって、CT画像を組み合わせて、位置関係を明瞭にすることもできます。画像で腹部中央の茶色の部分が悪性リンパ腫ですが、治療によって消失したことがわかります。
超音波検査
人の耳では聞こえないほどの高い周波数の音が超音波です。超音波は臓器の境界で反射する性質があります。この性質を利用して、反射してくる音を受信して画像を作ります。この検査は放射線被曝の心配もなく、痛みもないので繰り返し検査することができます。
骨髄穿刺
血液疾患が疑われる場合には、骨髄穿刺針を用いて骨髄液を吸引採取し、塗抹標本を作製し、染色を行い顕微鏡で観察します。一つ一つの細胞の形態を評価するのに適しています。この標本では、一様な形態のリンパ芽球様の細胞が増殖しており、急性リンパ性白血病と診断されました。
骨髄生検検査
骨髄生検検査では、穿刺針よりも太めな生検針を用いて、骨髄組織をそのままの形で、針の中に捉えて採取します。骨髄の細胞の密度や構造を調べるのに適しています。再生不良性貧血では、造血組織が見られず、脂肪組織に置き換わっています。一方、骨髄異形性症候群(MDS)でも、血球の減少がみられますが、骨髄では再生不良性貧血とは異なり、造血組織がみられます。
染色体検査・FISH検査
染色体検査では、分裂中期の細胞を蓄積するために細胞分裂阻害剤を添加した培養液中でリンパ球を培養します。その後低張処理を行い細胞を膨化させ、スライドグラス上へ染色体標本を展開、ギムザ色素などで染色を行い顕微鏡下で観察します。
FISH検査では、特定の遺伝子座を蛍光プローブを用いて、染色体や間期細胞上で検出します。従来の染色体分析では、同定できなかった過剰マーカー染色体の同定が可能です。また、染色体分裂像が得られなくても、間期細胞核を用いて検査が可能です。
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