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小児遺伝性血液疾患の包括的な遺伝子診断システムを確立 research
小児遺伝性血液疾患の包括的な遺伝子診断システムを確立
名古屋大学大学院医学系研究科(研究科長・髙橋雅英)小児科学の小島勢二(こじませいじ)名誉教授、村松秀城(むらまつひでき)助教、名古屋大学医学部附属病院先端医療・臨床研究支援センターの奥野友介(おくのゆうすけ)特任講師、京都大学大学院医学研究科 腫瘍生物学の小川誠司(おがわせいし)教授、吉田健一(よしだけんいち)助教、東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター宮野悟(みやのさとる)教授・白石友一(しらいしゆういち)助教らの研究グループは、小児遺伝性血液疾患における包括的な遺伝子診断のシステムを確立しました。
小児遺伝性血液疾患とは、生まれながらにして血液を作る働きに異常があり、貧血や、白血球の減少、血小板の減少といった症状を来す病気の一群を指します。非常に稀な病気の集まりであり、一番患者の多いファンコニ貧血という病気でも、日本における患者数は年間10人程度です。この病気の結果として貧血などが起こることは共通しているのですが、その原因は様々です。そして、その原因によって治療法が全く異なるため、正しい診断を行うことが非常に重要です。
小児遺伝性血液疾患は、両親から引き継がれた遺伝子の異常か、あるいは患者本人に新たに生じた遺伝子の異常によって起こります。そのため、もっとも直接的な診断法は、遺伝子を検査することです。しかしながら、小児遺伝性血液疾患の原因となる遺伝子は、数が多く、それぞれの遺伝子も平均的な遺伝子よりとても大きいため、従来の方法(キャピラリーシークエンス法)を用いた検査は非常に困難でした。
本研究グループは、次世代シーケンサーという新たな機器を用いて、小児遺伝性血液疾患の原因となる100以上の遺伝子を一度に解析が可能となる、遺伝子診断システムを構築しました。
実際の患者の検体を用いて検討を行ったところ、解析した371人のうち、33%に当たる121人の患者の遺伝子診断を確定できました。また、遺伝子診断が得られた患者の約1割では、主治医が考えた診断(臨床診断)と遺伝子診断が一致しないことが明らかとなり、この検査が小児遺伝性血液疾患の正確な診断に貢献する可能性が示されました。
本研究結果は、米国臨床遺伝学会(American College of Medical Genetics)より発行されている科学誌『Genetics in Medicine』『米国東部標準時間2017年1月19日付の電子版』に掲載されました。
※ 詳細は、名古屋大学のプレスリリースをご覧ください。
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