ACTIVITIES基金の活動報告

東海高校サタデープログラムに参加 activities

2018.2.25

東海高校主催サタデープログラムの事前打ち合わせ

 2018年2月15日に、東海高校の生徒が、サタデープログラムの取材のために名古屋大学を訪れました。これは、2月24日に開催される東海高校の恒例行事であるサタデープログラムで、当基金の小島理事長が、「17 歳の遺志 未来へ〜小児がん医 療の現状」と題した講座を担当することを受け、事前の打ち合わせを兼ねての訪問でした。東海高校の主催するサタデープログラムでは、すべてを生徒が企画し、事前の準備を行います。

東海高校の生徒さんと名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター 特任講師 奥野友介、名古屋大学 名誉教授 小島勢二

 小児科医局や研究室を案内してもらい、次世代シークエンサーによる遺伝子解析などの説明に食い入るように聞き入り、積極的に質問する姿が見受けられました。未来の医師、研究者を目指す若者たちが一人でも増え、病気で苦しむ子供たちに明るい未来が訪れるようにと、小島理事長、奥野講師、大学院生の片岡先生、村上先生たちも熱心に対応してくれました。

東海高校の生徒さんと名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター 特任講師 奥野友介 東海高校の生徒さんと片岡先生

2018.2.24 東海高校サタデープログラム開催

 さて、今回のサタデープログラムは「17歳の遺志 、未来へ〜小児がん医療の現状」というテーマで開催されました。このテーマを選んだのには、以下のような経緯があります。

 昨年 9 月に東海高校の生徒だった川澄敬くんは、2年間の闘病の後に、悪性リンパ腫という小児がんで亡くなりました。当基金の活動に賛同したご両親から、集まった多額な香典が当基金に寄せられました。基金としては、17歳という若さで亡くなった敬君、さらにご家族の想いを周りに伝えたいという趣旨から、2018年 1 月 14日に川澄敬記念シンポジウムを開催しました。

2018年 1 月 14日に川澄敬記念シンポジウム

 シンポジウム当日は、300人以上収容可能な会場で立ち見がでるほどの熱気に溢れたものになりました。 このシンポジウムの熱気を、敬君の母校で再現しようという思いから、今回の企画が生まれました。ほぼ満席となった教室には小さなお子さんを連れた聴講者も目立ち、小児がんという病気そのものへの関心と小児がん基金への関心の高まりを感じました。

東海高校主催サタデープログラム

 最初に、敬くんのお母様の知里さんと親友の齋藤漠くんにお話をいただきました。

 お母様は、敬くんが自分が受けた高額な医療費は社会の人々によって支えられており、「いつか治ったら社会に恩返しがしたい。」という思いで闘病生活を続けていたこと、再発を繰り返す中で死を意識するようになっていったことなどをとても静かな口調で語られました。そして、会場の生徒たちに向けて、「今は周りに支えられて生きているけれども、いつか支える側の人になってください、それが敬の遺志でもあります。」と 語りかけられました。

 また、敬くんが亡くなる前に知里さんに語られた将来の夢も話 してくださいました。 「大学生になりたかったこと、彼女を作りたかったこと、夜景の見える素敵なレストラン でプロポーズしたかったこと」など。 どれも若者らしく、健康なら当たり前なことですが、それが叶わない夢であるこ とを受け入れ、敬君がどんな想いでお母様に話し、それをどんな思いで知里さんが聞いていたのかと思 うと、会場に居た一人として、胸が詰まる思いでした。

 また、敬くんに有効と思われた薬も国の認可が下りておらず、承認を待っていたこと。 待っている間、敬くんは「まだなの?まだなの?」としきりに尋ねていたこと。助かる見込みがあるのなら、誰しも藁をもすがる思いで試してみたいと思うはず。それを叶えられなかったことへの悔しさも知里さんのお話から滲んでいました。

東海高校主催サタデープログラム

 次にお話しくださった敬くんの親友の齋藤漠くんは、敬くんが元気だった 頃のエピソード、病気になり入院を余儀なくされた敬くんと会えなくなり、段々不安が募っていったことなどを話されました。また、高校生らしい二人のやりとりの話しでは、思わず微笑んでしまうようなエピソードもあり、短い人生でしたが、太く、皆の心に深く刻まれる確かな足跡を敬君は残したのだなと感じました。

東海高校主催サタデープログラム

 会場の聴講者が知里さん、漠くんの話に涙し、溢れる思いが渦巻く中、小島理事長の登壇となりました。 敬くんのような病気を抱えている子どもをどうしたら助けられるのか、17歳の遺志未来へ~小児がん医療の現状というテーマのもとに、「日本の医療は、小児急性リンパ性白血病の5年生存率でいうと欧米に10%の遅れをとっている。年間50名の子どもが海外での治療なら助かった可能性がある。これまでの医療に加え、ゲノム医療やキメラ抗原受容体(CAR-T)療法といった有望な治療が、敬君のような難治性小児がんの分野でも研究されている。次世代シーケンサーという最新の検査機器で網羅的な遺伝子診断を行うことで、より有効な薬剤の選択が可能となった。ただ、ゲノム医療もCAR-T療法も、現時点では、わが国では保険医療で認められていない。昨年、米国でCAR-T治療に用いる製剤が薬事承認されたが、5000万円を超える超高額な薬価がついた。近々、日本でも承認されるかもしれない。網羅的遺伝子診断も、自費診療だと、60万円から100万円と高額である。企業に任せるのではなく、アカデミアが自分の患者ためにこれらの先進医療を開発すれば、劇的に安価にこれらの医療を受けることができるようになる。」このような講義のあとに、名古屋大学小児科の医師たちは、病気の子どもたちが皆平等に医療を受けられるように安価な薬剤や検査法の開発に日々尽力していること、そしてそれを実現するには多くの皆さんの協力が必要だと訴えました。

  多くの方々に関心を持っていただき、実際を知ってもらうことが今後の医療の発展の礎になると思います。 そういった意味でも東海高校での講義はとても有意義で、実りあるものとなりました。 たくさんの皆様にご聴講いただきありがとうございました。

東海高校サタデープログラム実行委員の皆さん(3名)、名古屋小児がん基金 理事長 小島勢二
左から東海高校サタプロ実行委員(2名)、川澄敬くんのお母さま知里さん、名古屋小児がん基金 理事長 小島勢二



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