RESEARCH最新の研究内容
第25回APBMT年次集会の話題から research
小島勢二
今年のAPBMT(Asia-Pacific Blood Marrow Transplantation Group)の年次集会は、10月9日から11日まで、インドのアラビア海に面した港町であるコーチンで開催される予定でしたが、コロナ禍のためにWEB開催となりました。2年前に参加したインド血液・輸血学会もコーチンで開催されましたが、旅費や宿泊費、学会参加費で20万円以上の出費でした。今回は自宅に居ながら、わずか2000円の参加費のみで最新情報を手に入れることができ、その利便性と経済性を考慮すると、WEB開催の優位性を強く感じました。
CAR-T療法の話題から
プレナリーセッションで北京博仁医院のTong Wu博士は過去4年間における1000例を超える自験例の臨床成績を発表されました。Tong Wu博士を15年ほど前に、北京方式のハプロ移植の講演を目的に名古屋に招待したことがあり、私にとってそれ以来の知己です。
CAR-T治療の対象は、急性リンパ性白血病(720人)、悪性リンパ腫(250人)が主ですが、最近では、多発性骨髄腫や急性骨髄性白血病にもCAR-T治療が試みられています。リンパ系腫瘍に対しては、CD-19製剤のみでなく、CD-20製剤やCD-22製剤も用いられています。
27人の再発急性リンパ性白血病患者に対し、CD-19製剤で寛解を得た後に、CD-22製剤を強化療法として投与する臨床研究が実施されました。21人で寛解が得られ、CAR-T投与18ヶ月後の生存率、無病生存率はそれぞれ88.5%、66.7%でした。
日本では悪性リンパ腫のなかでも、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫がCAR-T治療の適応ですが、同院では、さらに悪性度が高い再発バーキットリンパ腫にCD-19、CD-20、CD-22製剤を組み合わせた治療が行われています。5人の再発バーキットリンパ腫をこのプロトコールで治療したところ、全例で寛解が得られ、経過観察期間の中央値は11ヶ月と短期間ですが、全例が生存中です。
名古屋大学の高橋義行教授は、細胞治療のセッションで名古屋大学が開発した遺伝子導入に非ウイルスベクター法を用いたCAR-T療法について講演しました。本法で治療した第1例目の患者さんは、体内でCAR-T細胞の出現が確認され、投与後9ヶ月経過しましたが寛解を維持しています。また、名古屋大学で開発したCAR-T技術を使って製造したCAR-T製剤による臨床試験が、近々、タイのチュラロンコン大学で開始されることが紹介されました。
再発神経芽腫に対するHLA半合致移植&抗GD2抗体療法
名古屋大学では、進行期神経芽腫に対してKIRリガンド不一致同種臍帯血移植を行い、有望な治療成績を得ていますが、一旦再発した患者さんは依然として予後不良です。
ドイツのチュービンゲン大学のHandgretinger教授は、再発神経芽腫に対してHLA半合致血縁ドナーからの同種移植(ハプロ移植)に移植後の免疫療法として抗GD2抗体を投与する新規治療法を開発しました。ハプロ移植については、移植片対宿主病(GVHD)予防の目的で、採取した末梢血から細胞分離装置を用いてT細胞を除去しています。2009年以降、68人がこのプロトコールで治療されましたが、3年全生存率、無病生存率は58%、47%と大変優れた治療成績が得られています。急性GVHDも5例に発症したのみでした。
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