RESEARCH最新の研究内容
慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)の本態はリンパ増殖性疾患 research
プレナリーセッション:
慢性活動性EBウイルス感染症に対する網羅的遺伝子解析
先端医療・臨床研究支援センター
特任講師 奥野友介
慢性活動性EBウイルス感染症がクローン性疾患であることが明らかに
17人の慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)の患者から採取したリンパ球をT, B, NK細胞に分画して、それぞれの分画からDNAを抽出し、エクソーム解析をおこなった。その結果、10人の患者から採取した16検体から、平均5個の遺伝子変異が検出された。
慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)は、発熱、リンパ節腫脹や肝脾種など伝染性単核球症様の症状が慢性に持続する病気で、蚊アレルギーとの関連も指摘されている。
さらに対象を80人に増やして、605の遺伝子を含むターゲット解析をおこなったところ、23人から体細胞変異が検出され、CAEBVがクローン性疾患であることが明らかとなった。
髄芽腫などのドライバー変異として知られている DDX3X 変異が高頻度で検出されたことから、本症は単なるウイルス感染症ではなく、悪性疾患として捉えるべきである。また、ドライバー変異が、T, B,NK細胞に共通して検出されることは、EBウイルスはそれぞれのリンパ球に感染するのではなく、リンパ球の共通前駆細胞に感染すると考えられる。
さらに約1/3の症例でEBウイルスの遺伝子の一部が脱落ししていることを発見した。このような現象は、EBウイルスが原因となる節外NK/Tリンパ腫などの悪性腫瘍でも観察されたが、同じくEBウイルスが原因の伝染性単核球症などの非悪性疾患では、みられなかった。脱落部位には、ウイルス粒子を作成するに必須な部分が含まれており、EBウイルスが感染細胞を腫瘍化することとなんらかの関連があると思われる。
CAEBVの本態は「感染症」「腫瘍性疾患」どちらなのか
小島勢二
CAEBVは、長期間の経過後に急性白血病に移行する症例もあり、その本態が感染症なのか腫瘍性疾患なのか、長らく議論されてきた。CAEBVは稀ではあるが、欧米と比較して、日本をはじめとする東アジアに多く見られる疾患である。
本研究を主導した名古屋大学ウイルス学講座の木村宏教授は、もともと、名古屋大学小児科ウイルス研究グループに所属し、CAEBVの研究がライフワークである。私も、木村教授から紹介された何人かのCAEBVの患者さんに造血幹細胞移植をおこなってきたが、早くその病態が明らかになることを願ってきた。
今回の研究で、CAEBVの本態がリンパ増殖性疾患であることが明らかになったことは、今後の治療を考えるうえでも、たいへん、重要な知見である。プレナリーセッションに選ばれるのは、1300演題のうちの6題のみであるが、本研究が選ばれたのは、高い研究のクオリティから納得できるものである。
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