LECTUREDr.小島の小児がん講座
遺伝子パネル解析と網羅的遺伝子解析の違い lecture
遺伝子パネル解析と網羅的遺伝子解析の違い:網羅的遺伝子診断(4)
小島勢二
全てをまかなうパネル検査を設計することは困難
現在、日本では遺伝子パネル解析が健康保険の対象となり、臨床現場で用いられるようになりました。遺伝子パネル解析は成人のがんでよく変異が見つかる数百の遺伝子に絞り込んで解析する方法です。一方、網羅的遺伝子検査では2万個あるすべての遺伝子を解析するので、小児がんで見つかる多様な遺伝子変異をすべて検出可能です。
現在、国が進めているパネル検査に基づくがんゲノム医療では、遺伝子検査を行うだけでなく、得られた結果を遺伝子診断の専門家が参加する委員会で検討し、担当医からその結果を説明することが義務付けられています。
ゲノム医療では、治療効果が期待される医薬品の選択、未承認医薬品の治療効果の予測、免疫checkpoint阻害剤の治療効果の予測、がん種の診断、予後に関わる情報の入手、原発不明がんのがん種の特定、再発がんの診断、重複がんの診断、薬剤耐性獲得がんの治療法の選択、遺伝性腫瘍の診療手法の選択などが期待できます。
遺伝子パネル解析と網羅的遺伝子解析(全ゲノム解析)の違い
昨年6月に保険適用となったがんパネル検査は2種類ありますが、NCCオンコパネルでは114個のFoundationOne CDX がんゲノムプロファイルでは324個の遺伝子を検査できますが、その検査費用は共に56万円です。
最初は白血病など血液腫瘍性疾患で先行した分子標的治療も、現在は、種々の固形腫瘍にも用いられています。これらの分子標的治療の対象となる患者は遺伝子診断で標的となる遺伝子の変異が証明されている必要があります。使用頻度が高い分子標的薬には、HER2を標的分子としたトラスツズマブ、商品名ハーセプチンは乳がんや胃がんの治療薬です。EGFRを標的としたゲフィニチブ、商品名イレッサは非小細胞肺がんの治療薬です。
現在は成人に見られる5大がんが主にパネル検査の対象となっていますが、希少がんさらに専門医でも一生に1回しか出会わない超希少がんが存在します。全てをまかなうパネル検査を設計することは困難であるので、全ゲノム解析、全エクソーム解析、全RNAシークエンスなどの網羅的遺伝子解析が必要です。
繰り返しになりますが、網羅的遺伝子診断は正しい診断に導き、最適な治療の選択を可能とします。また、治療標的の発見によって、分子標的治療を目の前の子どもに届けます。同時に新たな発見に基づいて、将来の患者の治療成績を向上させることに貢献します。
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