RESEARCH最新の研究内容
オーストラリアにおける小児がんに対する全ゲノム解析の試み research
小島勢二
オーストラリアではライオンズクラブを始め、いくつかの小児がん基金のサポートによって、The Zero Childhood Cancer National Clinical Trialが進められている。この取り組みは2017年の9月に開始されたが、これまでに400人に及ぶ難治性小児がん患者が参加している。
主な目的は、全ゲノムシーケンスを行うことで、難治性小児がんに対する分子標的薬を見つけることである。201人のハイリスク小児がん患者から採取した検体から771個の遺伝子異常が検出されたが、その結果、137人(67%)の患者において治療標的となる推奨薬剤を見つけることができた。また、推奨薬剤が投与された35人において、治療への反応を判定可能であった。完全反応を4人(11%)、部分反応を7人(20%),病状の進行停止が14人(40%)に得られた。なお、この研究成果はNature Medicineに掲載されている。
小島コメント
わが国では、国立がん研究センターから小児や若年成人患者を対象に、がんパネル検査の有用性が報告されている。検討した119例のうち28例(24%)で治療対象となる遺伝子変異が検出されており、実際、10例(8%)に治療薬が投与されている。
一方、全ゲノムシーケンスを用いたオーストラリアからの報告では、67%に治療対象となる遺伝子変異が検出されている。パネル検査と比較して2.8倍の高頻度で治療対象となる遺伝子変異が検出されることを考えると、今後は、がんゲノム検査では、全ゲノムシーケンスが主流となるであろう。しかも、全ゲノム解析のシーケンス費用は10万円以下と安価になっている。
この研究の全ゲノムシーケンスはGarvan研究所で行われたが、2016年に京都で開催された国際人類遺伝学会で、Garvan研究所の研究者と会食する機会があった。名古屋大学でも次世代シークエンサーを用いた小児がん患者の遺伝子解析を行っていることを話したところ、ぜひ、山田ライオンズクラブ国際会長に会うことを勧められた。山田会長が、名古屋からもほど近い岐阜県美濃加茂市の病院の理事長であることを知って、その偶然に驚いたことを覚えている。そんなことから、山田会長には、名古屋小児がん基金の2周年記念イベントで講演をお願いした。山田会長の尽力があり、ライオンズクラブ国際協会の重点奉仕分野に小児がんが取り上げられたこともあって、以来、名古屋小児がん基金はライオンズクラブから多大なサポートを受けている。この場を借りてお礼申し上げる。
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