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【参加報告】第5回 アジアン小児がんコンソーシアム research
第5回 アジアン小児がんコンソーシアム参加報告
名古屋小児がん基金から旅費を援助頂き、2018年9月14日~16日に中国の上海で開催された第4回東洋小児科学会(The 4th Oriental Congress of Pediatrics)及び第5回アジアン小児がんコンソーシアムに小島名誉教授、髙橋教授と共に参加して参りましたのでご報告申し上げます。
1日目:小島名誉教授、学会全体の招待講演
上海で開催されている小児科学会の小児がんのセッションでアジアンコンソーシアムの発表が行われるという形で、私濱田と髙橋教授はそこで発表を行い、小島名誉教授は学会全体の招待講演としての講演がありました。
9月14日に中部国際空港を出発し、2時間半のフライトの後、現地時間13時に上海浦東(プドン)空港に到着しました。迎えの車で会場併設のホテルまで送って頂き、夕方の小島名誉教授の講演を拝聴しました。
循環器や感染症など各分野での招待講演のうち、血液分野で日本から小島名誉教授が招待されているという形でした。巨大なスクリーンのある、400~500人は入ろうかというメインホールで再生不良性貧血、先天性造血不全症候群、骨髄異形成症候群に関して講演され、非常に盛況でした。
初日の夜は血液腫瘍分野の医師が参加する会があり、中国、韓国、台湾の先生と話をしながら夕食を頂きました。参加者の中では私が一番若手のようでしたが、各国の先生とも非常に気さくに声を掛けて下さり、自分の国の医療事情について話をして交流することができました。
2日目:小児がんセッション
二日目の朝は8時15分から小児がんのセッションが開始され、私が一番目の発表演者でした。小児急性リンパ性白血病分野において、これまで名大が行ってきた次世代シーケンサーを用いた研究成果に加えて、それを組み入れた現在の治療戦略を実際の患者さんを提示しながら発表しました。
さらに、名大で開発して臨床試験が開始されたキメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T細胞療法)と、それを組み込んだ今後の治療戦略についても発表しました。中国、台湾、韓国の先生から次世代シーケンサーでの検査とCAR-T細胞療法について質問があり、議論を交わすことができました。
同じセッションで、髙橋教授は若年型骨髄単球性白血病のゲノム研究と、神経芽腫に対するKIRリガンド不一致臍帯血移植と2つの発表をしました。神経芽腫の発表で一番の肝となる治療成績のスライドが出た際は、5年生存率が90%とこれまでの常識を破る治療成績を示したことから、会場からどよめきが湧き、発表後も活発な議論が行われました。
台湾、韓国、中国の先生から多くの発表があり、どの演題も非常にレベルが高く、驚くのと同時に勉強になりました。特に、白血病に対するCAR-T細胞療法や先天性免疫不全症に対する遺伝子治療、小児がん患者さんを対象にしたゲノム医療など、日本ではまだ実用化されていない内容も多く、アジア諸国と比較しても、日本が遅れを取っているという現状を知る機会にもなりました。
2日目:上海小児病院の見学
中国の先生の厚意で二日目の夕方に上海小児病院の見学をさせてもらうことができました。巨大な小児病院で、小児がんの患者さん専用の200床(名大のおよそ4倍)のビルがあり、10床(名大の2倍)のクリーンルームで、年間200例(名大のおよそ5倍)の造血幹細胞移植を行っているということでした。外来は土曜日にも関わらず多くの患者さんがおり、人をかき分けながら通路を進んでいくほどでした。研究室は非常に広くてスペースに余裕があり、設備も整っていて羨ましかったです。
二日目の夜も中国の先生主催の夕食に招待して頂き、他の国の先生と日常的な話から小児がん治療の現状と今後について議論し意見を交わすことができました。
2泊3日という短い時間でしたが、名大での研究や今後の治療戦略を海外に発信できる非常に良い機会であったと同時に、アジアにおける小児がん患者さんの治療における現状と問題点を知ることができ、自分のこれからにとって大きな刺激となりました。このような機会を頂いたことに感謝申し上げます。
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