LECTUREDr.小島の小児がん講座
ウイルスの細胞構造と増殖 lecture
ウイルスの細胞構造と増殖:新型コロナウイルス感染症の基礎から臨床(1)
小島勢二
ウイルスの細胞構造
ウイルスは微生物のなかでも最も小さく、電子顕微鏡でしかみることができません。ウイルスの大きさは数十ナノメーターから数百ナノメーターで細菌と比較しても100分の1程度です。
ウイルスの基本構造は、粒子の中心にある核酸とそれを取り囲むカプシドと呼ばれるタンパク殻から構成されています。なかには、エンベロープと呼ばれる膜成分を持つものもあります。
ウイルスは核酸の型、DNAかRNAか、構造、1本鎖か2本鎖か、エンベロープがあるかないか、複製方法で大別されます。コロナウイルスは一本鎖RNAに属します。
コロナウイルスは内部に一本鎖RNAを有し、その周囲をスパイク蛋白、マトリックス蛋白、エンベロープ蛋白が取り囲んでいます。コロナとはギリシャ語で王冠を意味します。
細菌は、細胞構造を有しており、適当な環境下では、自力で増殖が可能ですが、ウイルスはDNAやRNAのような核酸と核酸を囲むタンパク質の殻しか持っておらず、自力で増殖できません。
ウイルスは他の生物の細胞の中に侵入して増殖する
ウイルスは生きた細胞に感染して、自身の遺伝子をもとに、自分のコピーを作ります。ウイルスが感染した細胞は、壊されてたくさんのウイルスを周りにまき散らします。まき散らされたウイルスは、さらに周りの細胞に感染して増殖します。
ウイルスは単独では増殖できないので、他の生物の細胞の中に侵入して増殖します。ウイルスは細胞表面にあるレセプターに結合し、細胞内に侵入します。細胞内に進入後、ウイルス粒子のカプシドが分解され、ウイルス核酸が細胞内に放出されます。放出されたウイルス核酸はポリメラーゼと呼ばれる核酸合成をになうタンパク質によって複製されます。
アビガンやレムデシビルなどの抗ウイルス薬は、ポリメラーゼの機能を抑制して、ウイルス核酸の複製を阻害します。宿主によって合成されたウイルスタンパクと複製されたRNAによってウイルス粒子がたくさん作られ、細胞が壊れるとウイルスは細胞の外に飛び出し、他の細胞に侵入します。このようにして、ウイルスは増殖します。
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