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骨髄不全症の診断に網羅的遺伝子解析が有用~日本血液学会総会の報告から~ research

2018.11.29

シンポジウム、骨髄不全症の新展開
先天性および後天性造血不全症候群に対するクリニカルシーケンス

名古屋大学医学部附属病院 小児科
講師 村松秀城
第80回日本血液学会 名古屋大学医学部附属病院 講師 村松秀城

鑑別困難な病気の確定診断には遺伝子診断が有用

 骨髄で十分な血液が造られないために、末梢血で汎血球減少がみられる病気は骨髄不全症と呼ばれるが、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、遺伝性骨髄不全症候群に大別される。3つの病気は症状や検査所見が似通っているので、鑑別が困難であるが、その確定診断には遺伝子診断が有用である。

網羅的遺伝子解析により215例(34%)で原因遺伝子が判明

 名古屋大学小児科では、2013年から2018年の期間に、626人の遺伝性血液病が疑われる患者さんに、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子解析をおこなった。解析には、主に550種類の遺伝子を含むターゲット解析を用いた。215例(34%)で原因遺伝子が判明し、本検査法の臨床的有用性が明らかとなった。

 遺伝性骨髄不全症を疑い検査した10/166(6%)において、臨床診断と遺伝子診断が一致しなかった。同様に後天性と診断された10/181(6%)にファンコニ貧血など、遺伝性骨髄不全症候群の原因遺伝子が検出された。再生不良性貧血や骨髄異形成症候群などの後天性疾患と遺伝性骨髄不全症とでは、治療法が異なり、網羅的遺伝子解析は、正確な診断には必須の検査法と思われた。

ターゲット解析の費用に大きな差

名古屋小児がん基金 理事長/名古屋大学 名誉教授
小島勢二

名古屋大学小児科では全国の病院からの依頼をうけ、骨髄不全や免疫不全症の網羅的遺伝子診断を行っている。網羅的遺伝子診断は、臨床現場で欠くことができないものになっているが、保険では未だに認められていない。がんを対象にしたゲノム診断が話題となっているが、小児では遺伝性の病気が多く次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子診断は、がん以外の病気でも、臨床上大変有用である。

成人がんのターゲット解析は、本年からがんゲノム拠点病院において先進医療の取り扱いになったが、120ほどの遺伝子を含むターゲット解析でも、患者負担は46万円である。名古屋大学がおこなうターゲット解析の解析費用は1検体あたり2万円で済むが、すべて、公的研究費や小児がん基金からの寄附金でまかなわれており、患者負担はない。同じく、がんを対象としたターゲット解析が自由診療では100万円するが、この価格の違いは理解しがたい。


次回の投稿は「慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)の本態はリンパ増殖性疾患
名古屋大学医学部附属病院 先端医療・臨床研究支援センター 特任講師 奥野友介 先生の発表です。




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