LECTUREDr.小島の小児がん講座

7種類のコロナウイルス lecture

2020.11.5

7種類のコロナウイルス:新型コロナウイルス感染症の基礎から臨床(2)

名古屋小児がん基金理事長/名古屋大学名誉教授
小島勢二

中国の武漢に発生した原因不明肺炎

報道関係者各位
中華人民共和国湖北省武漢市における原因不明肺炎の発生について

中華人民共和国湖北省武漢市において、昨年12月以降、原因となる病原体が特定されていない肺炎の発生が複数報告されています。現時点での状況及び厚生労働省の対応について、お知らせいたします。

1.患者の発生状況など(令和2年1月5日時点。国立感染症研究所まとめ)
・発生数:59例の確定例(うち7例は重症)。死亡例なし。59例の発症日は2019年12月12日-29日の間。
・感染経路:不明。ヒト-ヒト感染の明らかな証拠はない。また、医療従事者における感染例も確認されていない。
・発生場所の疫学的な特徴:海鮮市場(華南海鮮城)と関連した症例が多い。当該海鮮市場は、野生動物を販売している区画もある。現在は閉鎖中。
・類似疾患の可能性:インフルエンザ、鳥インフルエンザ、アデノウイルス、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)は否定されている。

引用:厚生労働省 報道発表資料:令和2年1月06日(月)

今年の1月初めに、厚生労働省のHPに掲載された中国の武漢に発生した原因不明肺炎の発生を伝える記事です。

2019年12月12日から29日までの期間に59例が診断され、うち7例は重症でしたが死亡例は見られないとのことでした。病原体や感染経路も不明ですが、海鮮市場と関連した症例が多いことに気づかれています。その後これほど世界中に流行するとは予想されていませんでした。

コロナウイルスの種類

7種類のコロナウイルス:新型コロナウイルス感染症の基礎から臨床

新型コロナウイルスを加えて、7種類のコロナウイルスが知られています。

4種のヒトコロナウイルスは、かぜの原因の10~15%を占め、毎年世界中で流行しています。この4種類のコロナウイルス感染が原因で死亡することはまずありません。咳などの飛沫感染が主で、接触感染も知られています。潜伏期間は2~4日間で、感染症法の対象ではありません。

重症急性呼吸器症候群、SARSは2002年に中国広東省で発生しました。もともと、キクガシラコウモリに感染していたウイルスがヒトに伝播したと考えられています。8000人ほどの感染者を数えて終息しましたが、致死率は10%に達しました。咳などの飛沫感染が主ですが、接触や便から感染することもあります。潜伏期間は2~10日間で、2類感染症に指定されています。

中東呼吸器症候群、MERSは2012年にサウジアラビアなどのアラビア半島で発生しました。ヒトコブラクダに感染していたウイルスがヒトに伝播したと考えられています。これまでに2500人ほどが感染しましたが、現在も完全には終息していません。その致死率は35%にも達します。咳などの飛沫感染が主で、接触感染も知られています。潜伏期間は2~14日間で2類感染症に指定されています。

新型コロナウイルス感染症、COVID-19は2019年の12月に中国の武漢で、最初に見つかり、その後全世界に拡がりました。2020年の10月の時点では、世界の感染者数は4000万人、死亡者数は100万を超えています。致死率は、国によって差はありますが、5%ほどと考えられています。咳などの飛沫感染が主ですが、接触感染もあります。潜伏期間は1~14日間で指定感染症です。

新型コロナウイルスはSARSと同様に、野生のコウモリから伝播したと考えられています。

新型コロナウイルスはSARSと同様に、野生のコウモリから伝播したと考えられています。実際、SARSコロナウイルスと全遺伝子配列の80%が一致しており、キクガシラコウモリから検出されたコウモリコロナウイルスと全遺伝子配列の90~96%が一致しています。

新型コロナウイルスは変異しやすい

新型コロナウイルスの全遺伝子配列は、新型コロナウイルス感染症が発生してから、わずか1月後に中国の研究者によって報告されましたが、現在では、世界中のコロナウイルスのゲノム解析の結果が集められており、感染経路が追跡されています。新型コロナウイルスはたいへん変異しやすく、世界各国から採取された新型コロナウイルス遺伝子の個々の変異が時系列で報告されています。日本で流行しているコロナウイルスはヨーロッパ株や中国・韓国株とも配列が異なります。

新型コロナウイルスの分子疫学調査の結果

新型コロナウイルスの分子疫学調査の結果

国立感染研・ゲノム解析研究センターから報告された日本における新型コロナウイルスの分子疫学調査の結果です。発端は、中国の武漢で発生したウイルスですが、3月中旬以降は、ヨーロッパ由来のウイルス株による全国同時多発のクラスターが発生しました。しかし、6月中旬から、ヨーロッパ株とは異なるウイルス株が突然顕在化し、急速に増加しています。

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