RESEARCH最新の研究内容

小児がんに特化した遺伝子パネル検査の開発 research

2021.8.3
名古屋小児がん基金理事長/名古屋大学名誉教授
小島勢二

わが国で次世代シークエンサーを用いたがん遺伝子検査が実臨床の場で用いられるようになって2年が経過した。NCCオンコパネルシステムでは、114のがん遺伝子を、FoundationOne CDx がんゲノムプロファイルでは324のがん遺伝子を一度に検査することができる。費用は56万円と高額であるが、2019年6月から保険適用となっている。

2つの検査では、主に成人に頻度が高い肺がんや大腸がんなどで分子標的を検出することを目的とした遺伝子が含まれている。しかし、小児がんでは成人がんと異なる遺伝子異常を持つものも多いので、小児がんに特化した遺伝子パネルの開発が望まれていた。

2021年4月に開催された第121回日本外科学会定期学術集会で、千葉大学小児外科の菱木知郎教授は小児固形がんに特化した遺伝子パネル検査、NCCオンコパネルPedの開発状況を紹介した。NCCオンコパネルPedは国立がん研究センターが開発したNCCオンコパネルをベースに小児がんの予後予測または治療標的となりうる40遺伝子や治療方針に影響を与えうる57遺伝子と遺伝子融合を検出するために2遺伝子を追加したものである。

現在、NCCオンコパネルPedを用いた臨床研究が国立がん研究センター中央病院で行われており、さらに広範な遺伝子を搭載した新たな小児がん用パネル検査の開発も進めている。

小島コメント

小児がんは、専門医でも一生に1回しか経験しないような希少がんが存在する。このような希少がんの診断は時として小児がんを専門とする病理医でも困難である。融合遺伝子は、それぞれのがんにとって特有であるので、融合遺伝子を検出することで診断を確定することも可能である。成人がんと同様に分子標的薬の対象となる遺伝子異常を検出したいという要望もある。

しかし、パネル検査では、これらの希少がんを含む全てのがん遺伝子をカバーすることができないので、ヒトにある2万個の遺伝子全ての変異や融合遺伝子を検出することが可能な全ゲノムやRNAシーケンスを小児がんの診断に用いる試みも行われている。




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