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新しい疾患概念”AMeD症候群“を提唱 research

2020.12.25

造血不全、精神発達遅滞、低身長、小頭症を示す遺伝性骨髄不全症候群から新規疾患関連遺伝子変異を同定し、新しい疾患概念”AMeD症候群“を提唱!

名古屋大学名誉教授/名古屋小児がん基金理事長
小島勢二

名古屋大学環境医学研究所/医学系研究科小児科学の岡泰由講師、濱田太立病院助教、髙橋義行教授、小島勢二名誉教授、および荻朋男教授を中心とする研究グループは、アルデヒド代謝に関連するALDH2ADH5の同時2遺伝子変異が、造血不全、精神遅滞、低身長・小頭症を主徴とする遺伝性骨髄不全症候群の発症原因であることを突きとめ、新規疾患概念として「AMeD (aplastic Anemia, Mental retardation, and Dwarfism) 症候群」を提唱しました。

また、患者臨床症状ならびに病態モデルマウスの解析から、ALDH2の一塩基多型がAMeD症候群の臨床症状の重症度を規定することを明らかにしました。本研究成果は、2020年12月18日(米国東部標準時)に米国科学誌「Science Advances」に掲載されます。

名大チーム、新しい疾患概念”AMeD症候群“を提唱 |遺伝性骨髄不全症候群から新規疾患関連遺伝子変異を同定

<小島コメント>

骨髄不全症は小児がんとともに、名古屋大学小児科がもっとも力をいれている研究分野です。小児にみられる骨髄不全症の一部は、生殖細胞系列の遺伝子変異が原因の遺伝性骨髄不全症です。代表的な遺伝性骨髄不全症にはファンコニー貧血があります。遺伝性骨髄不全症は、白血病や固形がんに移行することがよくみられ、がんの病因研究の観点からも注目されています。

遺伝性骨髄不全症の診断には責任遺伝子異常をみつけることが、もっとも重要であることから、名古屋大学では次世代シークエンサーによるパネル検査を用いて遺伝子診断をおこなってきました。(2018年11月の日本血液学会における研究発表を参照)

パネル検査で遺伝子異常がみつからなければ、さらにエクソーム解析や全ゲノム解析による網羅的遺伝子解析をおこなってきました。しかし、これらの検査を駆使しても既知の責任遺伝子がみつからない症例を経験しています。

今回の研究では、既知の責任遺伝子がみつからない症例のなかから、共通の遺伝子変異をもつグループをみつけて、これまで知られていなかった新しい病気の存在を提唱することができました。

この病気が今まで気づかれなかったのは、ひとつの遺伝子変異でなく、アルデヒド代謝に関連するALDH2ADH5の2つの遺伝子が同時に変異することによって、はじめてこの病気がおこるからです。このような例は、まだあまり知られていません。ALDH2はアルコールが代謝されて産生するアセトアルデヒドを分解する酵素です。この遺伝子の変異は日本人の半数にみられ、お酒に弱い体質になります。また、ADH5はホルマリンの分解酵素です。

名古屋小児がん基金は、名古屋大学小児科がおこなう次世代シークエンサーによる骨髄不全症の遺伝子検査をサポートしています。




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